先週の金曜日、事件?は起こりました。
 私はレストランでアルバイトしてるんですが、その時の出来事です。

 車椅子に乗った30代くらいの男性のお客様が来店されました。
 ご希望のテーブルにご案内してから、お客様がおっしゃったのは
 右半身が動かない
 左手は動かせるが、握力が十分ではない
 という2つのことでした。
 言葉ははっきりしていますから意思の疎通には何の問題もありません。もし、何かあればお手伝いするという私のスタンスには変わりはありませんでした。

 生ビール中ジョッキをご注文いただき、運んでいきました。
 「飲ませて下さい」
 (・・・・・・・・・・!?)
 お客様の言葉に、一瞬、私は固まってしまいました。
「持つだけの握力がないんです」
 正直言って戸惑いを覚えました。
(そんなことやらせるなんて、この人何か勘違いしてない!?)
 それが私の率直な気持ちでした。しかし、頼まれたのは他でもない、お客様の目の前にいるこの私。逃げるわけにもいきません。・・・動揺を抑えて恐る恐るジョッキを持ち上げ、お客様の口元へ。
 すると!
 そのお客様、生ビールをとってもおいしそうにゴクゴク飲んだのです。

(・・・・・・・・・・・・・・)
 
「おつまみは何がありますか?」
 お客様の声で私は、我に返りました。
 さっそくメニューを広げ、差し出しました・・・が、受け取ってもらえません。メニューを両手で支えることができないからでした。
・・・一通りメニューをお見せしたところ、おつまみ2品が決まりました。

 やがて注文した料理が上がり、お席まで運んでいきました。
 (私に何ができるんだろう・・・?・・・私だったら、次に何をする・・・?)
 ・・・少し考えて、自分だったらまず手を拭くことに気が付きました。
 勇気を出して、しかし恐る恐る、おしぼりでお客様の手を拭きました。
  麻痺して曲がってはいましたが、繊細な指。そして、お手入れされてるんでしょうか、光沢のあるきれいな爪・・・。
 「きれいな指ですね」
 そんな言葉がごく自然に口を突いて出てきました。

 ・・・そのあとも、逐一お客様のご要望をお聞きしテーブルでお手伝いをしながら、おしゃべりしました。話して下さったことは、
 脳性麻痺ではなく、身体障害者であること
 このお店に来たことのある知り合いの紹介で、今日ここに来たこと
 そして知り合いの方いわく、店の人がいつもとてもよくしてくれること
などでした。
 
 そして2杯目のジョッキに口をつけたあと、(自分なら気になるので)鼻の頭についたビールの泡を拭いてあげました。

「何だか歩けそうな気がしてきました」

 その言葉に何と答えたか覚えていないのですが、その日の夜から次の日の1日いっぱい、その言葉とあの繊細な指が頭から離れませんでした・・・。
 
 ぼーっとしながらも、私に何が起こったのか少しずつ分かってきました。

 まずは指。私、きれいな手の男の人に弱いんですよ・・・。

 中学のとき、男の子が転校してきました。性格はいたって普通で、これといって目立つタイプではなかったんですが、ある日、私は息を飲みました・・・!
 男の子とは思えないような白くしなやかに伸びた指・・・。本当にきれいでした。以来、その子のことが気になり始めてしまいました・・・。
 
 でもそういえば、小学校3,4年のときに好きだった男の子も指がきれいでした・・・!その子は・・・おとなしくて勉強ができて、その指先に操られた鉛筆からは指と同じくらいしなやかで美しい文字が紡ぎ出され、また彼には絵の才能もありました。
 「男の子はうるさくて乱暴でガサツ」というイメージしかなかった当時の私にとって、その子だけは発するオーラが違って見えていました。落ち着いてて大人、って感じでしたね。

 次に「何だか歩けるような気がします」発言、あれにはシビレましたね。
 時間差で、あとになってからじわじわきました。あれは、駆け引きのないまさに真実の交流でした。心が通った瞬間とでも言えばいいのでしょうか・・・?
 あんな素直な言葉を発する人には久しぶりに会えた気がします。
 私は意識せずに色んな仕草を自然にすることができます。それは私が身体に何の障害も持たないからなのですね・・・!当たり前すぎて考えもしなかったけれど、それはとてもありがたいことなんだと気付かせてもらえました。障害に同情しているのではないですよ。障害を感じながら、でも障害を越えて人として関われたような気がして・・・そのことが嬉しかったんです・・・。

 このことは本当に私の心に響く出来事でした。
 また、あの方がご来店されたら良いなぁ・・・なんて考えています・・・。
 これって淡い恋心でしょうか・・・?
 
 
 



 

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック